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プリセールス&カスタマーサクセス マネージャーSAP S/4HANA マイグレーションガイド
SAP ECC:カウントダウンは始まっています。
SAPと、SAP界隈に影響力をもつ団体「ASUG」は、SAP ERP Central Component(ECC)などのバックオフィスのコアアプリケーションが、フロントオフィスのアプリケーションのイノベーションに追いつく必要性について、声高に提唱してきています。
ASUGのCEOであるGeoff Scott氏は、「企業の多くは、話題性のあるフロントオフィス・テクノロジーなどのマーケティング・イノベーションに多くの時間と費用を費やしているが、フロントオフィスとバックオフィスは、ある時点で同期する必要がある」と述べている。
すでにご承知のとおり、SAP ECCのサポートは2027年で終了します。それまでにSAP S/4HANAへ移行する必要性は明らかですが、多くの企業様が、具体的な行動がとれていないようです。
S/4HANAへの移行:マーケットの現状
弊社はお客様から様々なフィードバックを頂けますが、S/4HANAへの移行の取り組みは確実に進んでおり、皆さんその波に乗りたがっていることが伺えます。弊社の調査結果はSAPinsiderのレポート「SAP S/4HANA: State of the Market」と同調しており、同社の調査によると、回答者の半数以上(52%)が現在、S/4HANA移行の評価段階にあるとのことです。これは、一聴、企業様がS/4HANAへの移行を積極的に取り組んでいるように聞こえますが、SAP ERP ECCからS/4HANAへの移行を計画している多くの企業様が、より具体的なステップを踏んでいないことも示唆しています。
それはなぜでしょう?
消費財、小売、製造、製薬などのさまざまな業種のお客様とお話する中で、弊社が得た見解によると、
- SAPのお客様の多くは、S/4HANAへのシステムコンバージョン(ブラウンフィールド)パスを計画している。
- 大きな障害となっているのは、ビジネスにおけるS/4HANAへの評価(evaluation)である。
- プロジェクトの範囲、リソース、スケジュールを評価するのが難しい。
非常に多くの不確定要素と新規格に起因する、複雑性とリスクがすべてのSAP S/4HANシステムコンバージョンにつきものであり、実際、「ASUGとDSAGの共同調査」では、その複雑さが依然としてSAP S/4HANAシステムコンバージョンの大きな障壁になっていることが確認されています。その他の課題としては、現在のCOVID-19の世界的な危機に起因する遅延があります。
S/4HANAへの移行には3つの選択肢があります
S/4HANAへの移行を完遂するためのアプローチで、すべてのお客様に適した唯一無二なものはありません。
あるお客様は、greenfieldとして知られている、S/4HANAを新システムとして導入することで、現在ご利用いただいているSAP ECCの課題や悩みの種を切り捨て、クリーンな状態でスタートすることを選択しました。
また、既存のビジネスプロセスを混乱させないために、システムのコンバージョン(brownfield)を選択する人もいます。
現在のシステム環境をSAP S/4HANAに統合したい場合は、Landscape Transformationという選択肢があります。
各アプローチは異なる方法を用いており、それぞれにメリットとデメリットがあります。
Greenfieldアプローチ– New Implementation
GreenfieldプロジェクトはSAP S/4HANAを新規に構築することを意味します。ビジネスプロセスを再定義して最適化し、S/4HANAの新機能をフルに活用する絶好の機会です。このアプローチは、最初から運用の成功を保証するものではありませんが、新しいシステムの導入に伴い、課題や要件を見直すことができます。
Brownfieldアプローチ – System Conversion
Brownfieldアプローチは、SAP社がお客様に推奨しているS/4HANA移行アプローチです。SAP ECCを自社の用途に適合させたアドオンやカスタマイズなどの資産を、そのままS/4HANA環境でご利用いただけます。
これは「変換」プロセスになりますので、すべてのビジネスプロセスを新しいS/4HANAプラットフォームに移行し、適応させるものです。
この方法は、現在のビジネスプロセスを根底から見直すのではなく、本質的な業務変更を望まない場合には、より良い手法になります。
Brownfieldアプローチでは、S/4HANAへの移行後に技術的な問題が発生する可能性があります。しかし、SAPはこのようなリスクを最小限にするための特定のツールやガイドラインを提供しています。
Landscape Transformation – Selective Combinations(Bluefieldアプローチ)
Landscape TransformationはBluefieldアプローチとして認識されている方も多いと思います。これは、システムの変換や新規導入ではなく、SAP S/4HANAの選択的移行や複数システムの統合を指します。
このアプローチでは、SAP S/4HANAの移行を特定のビジネスプロセスに限定し、残りはそのままにしておくことができます。例えば、S/4HANAの機能をCentral Financeのビジネスユニットに組み込むなど、最高または最速のROIが期待できる移行にこのルートを選択する企業様もいらっしゃいます。
適切なSAPツールで実行することにより、本アプローチはSAPと非SAPシステムを統合することができます。このように、単一の集中型システムを構築することで、より合理的なシステムを再構築することができます。
適切な移行アプローチを選択するために
どのような移行アプローチが、お客様にとって最適なのでしょうか?
決断するには、組織の技術面・機能面において広範囲に渡って分析する必要があります。これには、現在使用されているデータベース、プラットフォーム、構成、ビジネスワークフロー、システムランドスケープなどの評価が含まれます。
さらに重要なのは、S/4HANAへの移行と、お客様のデジタルトランスフォーメーション推進における取り組みとをどのように結びつけるか、です。
つまり、現在の状況、今後数年間であるべき状況、そしてそこに到達するための計画を明らかにすることです。
SAPが推奨する移行戦略
2018年 SAP TechEdカンファレンスのインタビューで、SAP S/4HANAのバイスプレジデント兼チーフプロダクトオーナーのRudolf Hois氏は、SAP S/4HANA導入の50~60%がシステムコンバージョンであると述べています。実際、このBrownfieldアプローチの普及に対応するため、SAP S/4HANAの最新バージョンでは、システム変換の自動化やダウンタイムの短縮が改善されています。ただし、SAP S/4HANAの移行の種類は、実際には各企業の変更管理方針に依存するともHois氏は指摘しています。
SAP S/4HANAへの移行を成功させるためのステップ
アプローチ方法が決まったら、次はECCからS/4HANAへの移行を成功させるために必要なステップを具体的に計画することになります。
Greenfieldアプローチ
Greenfieldアプローチでは、SAP Activateの方法論が明確な構造と詳細な一連のステップを提供します。
- Discover:事業の価値を明確にし、その実現に向けたロードマップと戦略を策定します。
- Prepare:プロジェクトの最終計画とチームの準備に取りかかります。プロジェクトを最適に進めるために、チームにとって適切な人材を選ぶことが重要です。
- Explore:SAP S/4HANAは、特に新規導入の場合、お客様のビジネスにとって幅広いソリューションを提供します。より効率的な実装を実現するために、従来の要件ではなく、Fit/Gap分析でスコープ評価プロセスを開始します。
- Realize:前フェーズで確認したビジネス要件に焦点を当てます。これには、システム構成設定、統合シナリオ、データ移行などが含まれます。
- Deploy:本番環境を構築する。準備が整ったら、カットオーバー作業を行い、業務を新システムに移行します。
Brownfieldアプローチ & Landscape Transformation
必要なステップは「Preparation」と「Realization」の2つのフェーズに分けられます。
Preparation:
- System Requirements & Planning:既存システムのアセスメントを実施し、移行を実行するための最適なソリューションを定義します。
- Conversion Pre-Check:現行システムで有効なアドオンやビジネス機能がS/4HANAと互換性があることを確認します。(SAPはこの目的のためにSimplification Item Checkを提供しています)。
- Custom Code Migration:S/4HANAと互換性のあるカスタムコードを確認します。これは、特に現在のシステムに拡張がある場合には不可欠です。
Realization:
- System Installation:データベースの移行やデータ変換など、SAP S/4HANAへのコンバージョンを開始します。
- Follow-On Activities:technical conversion後、関連するすべてのカスタマイズを適合する必要があります。
- Data consistency check (especially for financial data):SAP S/4HANAは、財務会計(FI)と管理(CO)のすべての関連コンポーネントをUniversal Journalと呼ばれる1つのデータプールに統合ため、データを正しく移行できるように会計コンポーネントを照合することが不可欠です。
- Iteration Testing:すべてのカスタマイズが完了し、すべてのデータの移行が完了したら、システムが正しく動作することを確認するために、テストを実行する必要があります。
SAP S/4HANAへの移行を円滑に遂行するための3つの勘所
- バリュー・ストリーム・管理(ASM)を使用して優先順位を付け、エンドユーザー体験の付加価値に基づいてリソースを割り当てます。最も困難なプロジェクトが、最も影響力のあるプロジェクトであると勝手に決めつけないでください。
- 移行を開始する前に、実行可能なビジネスケースの構築を十分な余裕を持って開始しましょう。ギリギリまで待つと、技術的な問題点や競合他社に奪われた市場シェア、十分なリソースを確保できない移行プロジェクトなど、優柔不断の代償を払うことになります。
- 弊社は、S/4HANAへの移行を容易にし、テクノロジーへの投資をより早く回収できるようお手伝いします。
S/4HANA成功への旅はPanayaから始まる
弊社は、SAPと提携し「Panaya S/4Convert」を開発しました。
このソリューションは、S/4HANA移行の旅を始めるために必要な確実性と簡便性を提供し、価値ある洞察と詳細なレポートによって変更管理のギャップを埋めます。S/4HANAへの移行時間、コスト、リスクを削減するために設計されており、最適なスコーピング、自動コード修正、ビジネスプロセス再実装の促進などによって、不具合管理などの課題に取り組みます。
弊社は80以上のHANA移行と9,000以上のSAPプロジェクトの経験から、お客様のS/4HANAへの移行を成功させるためのお手伝いをします。
「すべての道はS/4 HANAに通じていますが、そのすべてがあなたの会社にとって正しいとは限りません。だからこそ弊社は10年にわたるSAP ERP領域の専門知識を駆使して、企業がERPの変更を安全かつ効果的に管理できるよう特別に調整したソリューションを開発したのです」とPanaya のCEO、David Binny氏は述べました。「それはS/4HANAへの旅に出る企業のための旅行保険のようなものです。」
プロジェクトが、Greenfield、Brownfield、Landscape Transformationのいずれであっても、Panayaの「change intelligence」は全体を通して継続的な品質と可視性を保証します。変化に俊敏に対応するために必要な自由と安心を手に入れ、S/4HANAマイグレーションプロジェクトは50%速く、100%安全になります。
プロフィール
気がついたらSAPの世界に20数年。外資系テクノロジーコンサルティングファームにて数多くのSAP 移行、アップグレードプロジェクトに参画。その後、コンサルファームで複数のSAP導入プロジェクトの経験を経て、PanayaにJoin。